家づくりの豆知識⑧|照明計画の基本― 昼と夜で表情が変わる住まい ―
照明計画は、単なる“明るさの確保”ではなく、建築空間をどう見せ、どう感じるかを左右する重要な要素です。
窓から入る自然光(昼光)と、人工照明(夜の照明)をどのように融合させるかによって、
空間の印象や温度感、そして心理的な快適性まで変わってきます。
「昼は自然光が主役、夜は照明が主役」
この二つの“光の表情”をバランスよく設計することで、
時間の移ろいに寄り添う、美しく心地よい住まいが生まれます。

🕊️ 昼の光 ― 自然光(昼光)をコントロールする設計
日中の明るさをつくるのは、太陽光そのものだけではありません。
光の入り方・反射・拡散を丁寧に設計することで、空間全体の明るさと質をコントロールできます。
▪︎ 採光の基本
自然光は「直射光(ダイレクトな光)」と「間接光(反射した光)」で構成されています。
快適な室内環境をつくるには、直射光をそのまま取り込むのではなく、
壁や天井で反射させて拡散光(ソフトな光)に変えることがポイントです。
設計のヒント:
南面の開口部は庇(ひさし)やバルコニーで夏の日射を遮り、冬は低い角度の光を取り込む
北面の高窓や地窓は、一日を通して安定したやわらかい光を確保できる
東西面は日射の影響が強いため、可動ルーバーや外付けブラインドで調整
さらに、白い壁や木の天井など、反射率40〜80%程度の素材を組み合わせると、
光がやさしく空間全体に回り、時間帯による明暗の変化も穏やかになります。
🌙 夜の光 ― 照明デザインの考え方
夜は、照明が空間の“表情”をつくります。
建築照明の基本は、「全体照明 × 補助照明 × 演出照明」を組み合わせる“多灯分散照明”です。
一灯で全体を明るくするよりも、複数の灯りを役割ごとに配置することで、
陰影と奥行きが生まれ、空間の質がぐっと高まります。
▪︎ 全体照明
部屋全体を照らすための照明。
ダウンライトを一列に並べるのではなく、必要な範囲だけを計画的に照らすことで、
明暗のグラデーションが生まれ、空間に立体感を与えます。
▪︎ 補助照明
キッチンやワークスペースなど、手元を明るく照らす照明。
眩しさ(グレア)を抑えた器具を選ぶと、作業しやすく快適です。
▪︎ 演出照明
壁面や素材を照らし、建築の表情を際立たせる照明。
間接照明やブラケットライトで光を反射させると、影がやわらぎ、
素材感や質感が際立つ空間が生まれます。
✨ 光の色で変わる印象
光には“色温度”という概念があり、その違いが空間の印象を左右します。
数値が高いほど白っぽく(さわやかに)、低いほどオレンジ色で(あたたかく)感じられます。
種類 色温度 特徴・おすすめの場所
昼白色(約5000K) 白っぽい光。キッチンや洗面など作業に適する
温白色(約3500〜4000K) 自然で落ち着いた光。リビングや廊下におすすめ
電球色(約2700K) あたたかく柔らかい光。寝室やリビングでくつろぎを演出
また、演色性(Ra)という数値が高いほど、
木や布、壁の色が太陽光の下に近い“自然な見え方”になります。
住宅照明では、Ra80以上が標準的、
Ra90以上になると素材本来の色味がより美しく映えます。
たとえばリビングでは、電球色の間接照明を加えることで、
一日の終わりに心がほっと落ち着く時間が生まれます。
照明は、ただ「明るくする」ための設備ではなく、建築を引き立て、暮らしを豊かにする要素です。
自然光の入り方、反射する素材、灯りの色や位置。
それらを丁寧に組み合わせることで、空間は時間とともに表情を変え、
住まい全体が“呼吸するような心地よさ”をまといます。
昼は自然光のリズムを生かし、
夜は灯りのデザインで心を整える。
その積み重ねが、住まいの「居心地」と「美しさ」をつくっていきます。


